バクタ配合顆粒の少量長期投与の理由


大学病院の小児科から以下の処方がありました。

患者さんは1歳5ヶ月の男児 体重10kg

バクタ配合顆粒 1回 0.1g
就寝前      7日分

バクタ配合顆粒はST合剤と呼ばれる抗生物質です。腎臓や肺への移行が良好で、慢性的な吸器疾患や膀胱炎に対して、少量を長期に用いることがあります。


この処方は、膀胱尿管逆流症(VUR)の処方です。

膀胱尿管逆流症は膀胱尿管接合部の逆流防止機構の破綻によって蓄尿時あるいは排尿時に膀胱に溜まった尿が尿管、腎盂、さらには腎実質に逆流する現象です。

原発性と続発性に分類されます。
原発性は膀胱尿管接合部の先天的な形成不全あるいは排尿機能発達異常によって発生します。
続発性は神経因性膀胱、下部尿路閉塞、炎症によって発生します。

複雑性尿路感染症の原因疾患で有熱性尿路感染を起こす小児の30−50%にVURが合併しています。


膀胱尿管逆流症の治療


尿路感染の予防により腎瘢痕化による逆流腎症を予防して腎機能の保護を最優先とします。
治療は逆流の程度、年齢、性別、瘢痕の程度、尿路感染の頻度と程度などを考慮して選択します。
原発性VURは自然消失する可能性があり一般に年齢が低いほど、また、gradeが低いほど消失率が高い傾向にあります。
思春期になっても存続する場合やgradeⅤではほとんど自然消失しないといわれています。

治療法には保存的治療法と外科的治療法があります。

保存的治療法

【持続的少量抗菌薬予防投与】
尿路感染の防止を目的として行います。

腎臓への移行生が良いバクタ配合顆粒が良く使用されます。
1歳未満の小児の場合は、ST合剤が新生児及び乳児への安全性が確立されていないため、ケフラール(セファクロル)が使用されます。

かなり少ない量を1日1回就寝前投与するという特徴的な処方なので、1度経験したら忘れない処方です。

処方例 下記のいずれかを用います。


  1. バクタ配合顆粒 1回4−8mg/kg(製剤量として) 1日1回 就寝前
  2. ケフラール細粒(小児用) 1回5−10mg/kg(成分量として) 1日1回 就寝前

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_nyouro.pdf

VURに対する予防的持続少量抗菌薬投与のエビデンスには2014年のRIVUR studyがあります。
1~2回の尿路感染エピソードをもつgradeⅠ−ⅣのVUR児に対するST合剤での持続的少量抗菌薬予防投与が尿路感染再発に有効であることが認められました。
しかし、腎瘢痕に対する効果は認められませんでした。

RIVUR Trial Investigators,et al:Antimicrobial prophylaxis for children with vesicoureteral reflux.N Engl J Med 370:2367−2376,2014
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1401811
PMID:24795142


【排泄管理】(定時排尿,便通のコントロール,抗コリン薬の服用など) 
排尿習慣が自立している小児には2~3時間を目安とした定時排尿を勧めます。
切迫性尿失禁や小児過活動膀胱に対して抗コリン薬を使用することもあるようですが、児に対する安全性は確立されていません。

外科的治療法


外科的治療法の絶対的適応は保存的治療でコントロールできない尿路感染の再発を認める場合です。相対的適応は自然治癒傾向を認めない無症候性VURで、一般的にgrade Ⅲ以上が対象となります。

【観血的逆流防止術】
従来の標準的治療法で成功率も95%以上と高いといわれています。
近年、腹腔鏡による鏡視下手術も行われていて、大きな傷が残りにくい手術が可能になっています。

【内視鏡的注入療法】
膀胱鏡下に尿管口から膀胱壁内尿管粘膜下にヒアルロン酸・デキストラノマービーズ(Deflux)を注入します。長期成績のエビデンスは十分ではありませんが低侵襲なので追加注入も可能というメリットがあります。


小児の予防的持続少量抗菌薬投与のポイント


少量のためコンプライアンスを高める説明が、予防投与成功の鍵となります。
バクタ配合顆粒は、苦いためグズりやすい寝る前に飲ませるのは一苦労です。
はちみつ、ココアパウダー、練乳、チョコレートクリーム、バニラアイスと一緒に服用させると苦味が感じにくくなります。

ブドウゼリー、ヨーグルト、リンゴジュース、乳酸菌飲料などは苦味がますのでおすすめできません。