キノコの成分からできた抗がん剤 クレスチン細粒販売中止


抗悪性腫瘍剤のクレスチン細粒が販売中止となるようです。

クレスチン細粒販売中止のご案内(第一三共)
https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2016/1610stop_psk.pdf

2017年9月末日販売を中止。2018年3月末日経過措置期間満了の予定のようです。


クレスチン細粒はキノコのサルノコシカケ科かわらたけCM-101株の菌糸体より抽出・精製したたん白多糖体を成分とする抗悪性腫瘍剤です。

呉羽化学が、1965年、“さるのこしかけ”の熱水抽出物を服用した胃癌患者が日常生活に復帰した実例に着目し、キノコ類の抗腫瘍作用に関して研究を開始しました。
そこで、様々な菌株で検討を重ねた結果、サルノコシカケ科かわらたけが抗腫瘍効果、継代安定性などから最適であること、さらにその培養菌糸体にも子実体と同様の抗腫瘍効果があることを発見し、製剤化に成功しました。


販売中止の理由


メーカー文書には「諸般の事情」との決まり文句が書かれています。

実際の理由は、原材料であるカワラタケの入手が困難になったことにあるようです。
無論、カワラタケ自体はamazonでも販売されているくらいです。しかし市場への供給はされていますが、医薬品として使用可能な品質のものが、今までの価格で調達が難しくなっているようです。


クレスチン細粒の代替品


クレスチンの抗悪性腫瘍剤としての大きな特徴は、担癌宿主の低下した免疫応答を改善・回復する免疫賦活作用だと言われています。
臨床上では、
他の化学療法剤との併用により、胃癌患者、結腸・直腸癌患者の術後補助療法、及び小細胞肺癌患者において有用性が確認されています。

胃癌患者、結腸・直腸癌患者の術後補助療法については、複数の探索的試験が行われエビデンスも揃ってきました。


胃癌術後補助化学療法

ACTS-GC試験によりS-1の有効性が示され,これがわが国における標準治療となった(推奨度1)

胃癌治療ガイドライン(日本胃癌学会編)
http://www.jgca.jp/guideline/fourth/category2-e.html#H1_E

大腸癌術後補助化学療法

大腸がんの術後補助化学療法に使用される抗がん剤としては、古くから用いられているフルオロウラシル(商品名:5-FUなど)、5-FU系の飲み薬であるテガフール・ウラシル配合剤(商品名:UFT)、カペシタビン(商品名:ゼローダ)などと、2009年に補助化学療法で使用できるようになったオキサリプラチン(商品名:エルプラット)が挙げられます。

大腸癌治療ガイドライン2014年版(大腸癌研究会)
http://www.jsccr.jp/guideline/2014/particular.html#no5


小細胞肺癌

進展型小細胞肺癌では以下のレジメンが使用されます。
PI療法
シスプラチン+イリノテカン

PE療法
シスプラチン+エトポシド

CE療法
カルボプラチン+エトポシド

肺がん診療ガイドライン(日本肺癌学会)
https://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/index.php?content_id=3


免疫賦活剤

シイタケから抽出した『レンチナン』。
溶連菌という細菌の死菌製剤である『ピシバニール』
ベスタチンという、白血病に使えるキノコ製剤もあります。
これらは免疫賦活による延命効果を期待する「抗癌剤」として収載されています。





クレスチンの過去


このクレスチン「効かない薬」として避難された過去があります。

現在のがん治療の功罪~抗がん剤治療と免疫治療
http://umezawa.blog44.fc2.com/blog-entry-62.html

このクスリも、本当に効きません。
まったく効きません。
私はかつて相当数の患者さんに使ってきましたが、効きませんでした。
(中略)
腫瘍の縮小効果はまったく認められませんでしたが、増大抑制効果は確実に存在すると思われます。
副作用のない増大抑制効果は、その抑制されている期間だけは確実に延命できているものと考えられます。

クレスチン - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%B3

1977年の販売開始後、単独でかなり多く使われた時期があった。 しかし、現在では本剤単独では効果がないことが判明しており、他剤との併用で用いられる。

伝説の抗がん剤トップ製品クレスチン(Lymphocyte-bank Co.,Ltd)
http://ank-therapy.net/archives/590391.html

世界中で承認しているのは、日本だけである、というのも非難の理由の一つでした。 日本の英断で、素晴らしい薬を認めている、のであれば、堂々と誇りに思っていいのですが、なにせ、この薬、中身は、サルノコシカケの一種です。 キノコ、なのです。 
(中略)
まあ、所詮、キノコです。 それで、がんが治る、ということはないでしょう。 

がん補完代替医療としてのクレスチン


最近は、分子標的薬の登場など抗がん剤も進化しており、クレスチンの使用は減ってきました。
最近では、クレスチンは副作用がほとんどない点から、「副作用が軽微で、自宅で内服するだけで延命が得られる」非常に有効な、「良く効くクスリ」として、がん補完代替医療として利用されているようです。

しかし、乳がんにおける化学療法とクレスチンの併用療法に有効性は認められていません。

Yokoe T, et al,.Anticancer Res. 1997 Jul-Aug;17(4A):2815-8.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9252721
Iino Y,et al,.Anticancer Res. 1995 Nov-Dec;15(6B):2907-11.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8669887
Toi M,et al,.Cancer. 1992 Nov 15;70(10):2475-83
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1423177

食道がんにおいても生存期間に差はありません。

Ogoshi K,et al.,Am J Clin Oncol. 1995 Jun;18(3):216-22
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7747709

さらに成人急性非リンパ性白血病の維持化学療法へのクレスチン併用療法で寛解期間、生存期間ともに延長は認められていません。

Ohno R,et al.,Cancer Immunol Immunother. 1984;18(3):149-54.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6391658


このように、その効果に対するエビデンスは乏しいのが現状です。