2016年8月27日土曜日

ネオラミン・マルチV注射用 販売中止と代替品



高カロリー輸液用総合ビタミン剤『ネオラミン・マルチV注射用』が販売中止となるようです。
(経過措置期間は2018年3月末予定)

販売中止のお知らせ(科研製薬)
http://www.kaken.co.jp/medical/bluedi/neolaminmultiv_201608.pdf

日本化薬と科研製薬の併売ですが、両社とも販売中止のようです。


経中心静脈高カロリー輸液法(IVH:Intravenous Hyperalimentation)又は完全静脈栄養法(TPN:Total Parenteral Nutrition)といわれる栄養補給は医療の全領域において欠くことのできないものとなっています。

これは、経口栄養摂取が困難な患者の中心静脈にカテーテルを挿入し、高張グルコース、アミノ酸、電解質などを主体とする高カロリー輸液を注入して栄養補給を行う方法です。

IVH による栄養補給は長期に投与されることも多く、上記栄養の他にビタミンや
微量元素の投与が必須とされています。

『ネオラミン・マルチV注射用』の前身であるネオラミン・マルチは、13 種類のビタミンを 3 つのアンプルに分けた組合わせ製剤としていました。

しかしネオラミン・マルチは、臨床の現場から、輸液調剤の作業性の向上及び使用の利便性、異物、細菌の汚染の機会の低減化の観点から、容器の 1 本化の要望がだされるようになりました。

以上のことから、13 種類のビタミンを 1 バイアルに処方する検討を開始し、流通可能な保存条件で一定の品質保証もできる製剤を開発し、ネオラミン・マルチ Vとして1990年発売されたのです。


TPN施行時には乳酸アシドーシスを防ぐため高カロリー輸液用総合ビタミン剤の混合が推奨されています。
しかしながら,高カロリー輸液用総合ビタミン剤は混合すると不安定なため、用時混合せざるを得ませんでした。
このため、高カロリー輸液用総合ビタミン剤未投与による代謝性アシドーシスの発現、アンプルカットや溶解操作に起因する細菌汚染や異物混入の問題が依然として残されており、臨床現場からは高カロリー輸液用総合ビタミン剤を予め配合した、糖・アミノ酸・電解質液の開発が要望されるようになってきました。

そこで登場したのが、TPN基本液にアミノ酸、脂肪、ビタミン、微量元素を配合して製品化したフルカリックやエルネオパ、ネオパレンなどのTPNキット製剤です。

ビタミンを含むTPNキット製剤が使用可能となり、混合調製作業における様々なリスクが軽減され効率化にもつながることから、TPN用ビタミン製剤を使用する機会は減少してきています。

今回の販売中止も需要の減少によるものと考えられます。


ネオラミン・マルチV注射用の代替品


高カロリー輸液用総合ビタミン剤には他にも、マルタミン注射用、オーツカMV、ビタジェクト注キットがあります。

このなかで、ネオラミン・マルチV注射用と組成が近いのは『マルタミン注射用』です。

マルタミンはビタミンAやB群の含量が他の製剤に比べ高くなっているのが特徴です。
マルタミンには可溶化剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用しているためアナフィラキシーには注意が必要です。



A D E K B1B2 B6 B12 C ニコチン酸 パントテン酸 葉酸 ビオチン
単位
I.U.
I.U.
mg
mg
mg
mg
mg
μg
mg
mg
mg
μg
μg
ネオラミン・マルチV
注射用
3300
D2 
10μg
15
K1 
2
3
4
4
10
100
40
15
400
100
マルタミン
注射用
4000
D3 
400
15
K2 
2
5
5
5
10
100
40
15
400
100
オーツカMV注
1号






3.9
4.6
4.9
5
100
40
15
400
60
オーツカMV注
2号
3300
D3
200
10
K1 
2


















ビタジェクト注キット
A液
3300
D2 
10μg
15
K1 
2





10
100


15
400
100
ビタジェクト注キット
B液








3
5.08
4




40








参考:
NPO法人PEGドクターズネットワーク
http://www.peg.or.jp/lecture/parenteral_nutrition/02-11.html