パンスポリンT錠 販売中止と代替品


パンスポリン T錠100・200が販売中止となるようです。
(2017年3月ごろ在庫消尽予定)

パンスポリン注射からの切り替えに便利だったのですが、困りました。


「パンスポリン T錠100・200」販売中止について(武田薬品工業)
https://www.takedamed.com/content/medicine/newsdoc/160719pan.pdf

経過措置は2018年3月31日まで。


注射用セフォチアム塩酸塩製剤「パンスポリン」の経口投与を可能にするため、プロドラッグ化したものがパンスポリンT錠(セフォチアム ヘキセチル塩酸塩)です。

パンスポリンT錠は経口投与された後、腸管壁エステラーゼにより脱エステル化され、セフォチアムとして吸収され、抗菌作用を発揮します。

セフォチアムは第二世代セフェム系に分類されます。

第一世代セフェムであるセファゾリンのスペクトラムに加えて、インフルエンザ菌などのグラム陰性菌にスペクトラムを拡げたことが特徴です。

パンスポリンT錠は日本で開発され、武田薬品の販売力の元、日本で多く使われている経口第二世代セフェムです。しかし、世界的にはアメリカをはじめ販売されていない国が多く、セフロキシム アキセチルのほうがメジャーです。


パンスポリンTの代替品


同じ経口第二世代セフェムのオラセフ錠250mg(セフロキシム アキセチル)が該当します。

オラセフ錠はパンスポリンT錠と同様にプロドラッグであり、エステル化により経口吸収性を高めている薬剤です。


パンスポリンTにはあるが、オラセフにはない適応症

  • 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
  • 肺炎
  • 腎盂腎炎
  • 涙嚢炎
  • 角膜炎(角膜潰瘍を含む)



経口抗菌薬を見直す良いきっかけかもしれない


代替品として、同じ世代のセフェムであるオラセフを選択するのは悪くはありません。
しかし、本当に経口第二世代セフェムが必要なのでしょうか。

抗菌薬適正使用を見直す良い機会です。
少し考えてみましょう。


第二世代セフェムの使いドコロは「第一世代セフェムでは不安、でも第三世代セフェムを使うにはスペクトラムが広くてもったいない」という場面しかありません。

MRSAを除く黄色ブドウ球菌や連鎖球菌に対する抗菌力は第一世代セフェムのほうが優れています。

これらの菌を狙って第二世代セフェムを使うべきではありません。


また、経口抗菌薬選択時にはバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)の考え方が重要です。

第二世代セフェムや、『だいたいウンコになる薬』で有名な第三世代セフェムはバイオアベイラビリティが低く(50%以下)、臨床試験において経口第一世代セフェムと同程度の効果しかありません。

これらを考慮すると経口第一世代セフェムも代替品候補となります。


経口第一世代セフェム

  • ケフラール(セファクロル)
  • ケフレックス(セファレキシン)
  • センセファリン(セファレキシン)



未来の子どもたちのためにも、経口第三世代セフェムやそれ以上に広域な経口抗菌薬の安易な処方は控えましょう


表. 外来感染症とオススメ経口抗菌薬


感染症

第1選択薬

第2選択

中耳炎

アモキシシリン

アモキシシリン・クランブラン酸、ST合剤、第二・第三世代セフェム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン

連鎖球菌性咽頭炎

アモキシシリン

マクロライド、第一世代セフェム、クリンダマイシン

副鼻腔炎

アモキシシリン

第二世代セフェム、ドキシサイクリン

動物咬傷・ヒト咬傷

アモキシシリン・クランブラン酸

第二世代セフェム、ドキシサイクリン

歯肉炎

アモキシシリン

クリンダマイシン、セファレキシン、アジスロマイシン

市中肺炎

マクロライド

(アモキシシリン or 第二、第三世代セフェム or ニューキノロン)

アモキシシリン・クランブラン酸、第二・第三世代セフェム、ドキシサイクリン

皮膚・軟部組織感染症

第一世代セフェム

アジスロマイシン、クラリスロマイシン、セフポドキシム、セフジニル、アモキシシリン・クランブラン酸

尿路感染症

ニューキノロン

アモキシシリン、ST合剤、第一・第二世代セフェム


参考:

抗菌薬適正使用マニュアル(京都私立病院協会 感染症対策委員会編 2016年3月版)
http://khosp.or.jp/files/pdf/document/koukinyaku-manual.pdf