2016年7月29日金曜日

ディフェリンとベピオが一つになった塗り薬 エピデュオゲル


ニキビは、思春期以降に皮疹が顔や背中にできる慢性炎症性皮膚疾患です。
皮脂腺などの代謝異常、毛穴の角化異常そしてアクネ菌等の増殖が複雑に関与するとされています。
尋常性座瘡治療ガイドライン、日皮会誌 118: 1893-1923, 2008
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913643_1.pdf

ニキビの治療薬としては、アダパレン外用剤(ディフェリンゲル)、過酸化ベンゾイル外用剤(ベピオゲル)、経口又は外用の抗菌剤等が用いられています。
重症度や皮疹の種類に基づき単独又は併用療法が選択されます。

エピデュオゲルは、レチノイド様活性及び抗炎症作用を有するディフェリンゲルと抗菌活性を有するベピオゲルを有効成分とする配合剤です。
患者利便性の向上や塗りやすさ等を期待して開発されました。


エピデュオゲルの添加物

エピデュオゲルは 1 g 中にアダパレンを 1 mg、過酸化ベンゾイルを 25 mg 含有する水性ゲル剤です。
製剤には、
アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート 80、
ジオクチルソジウムスルホサクシネート、
エデト酸ナトリウム水和物、
グリセリン、
ポリオキシエチレン(20)
ポリオキシプロピレン(20)
グリコール、
プロピレングリコール、
精製水が添加剤として含まれます。


エピデュオゲルは光に注意

光安定性試験の結果、エピデュオゲルは光に不安定でした。
製品である高密度ポリエチレンチューブ包装品は光に安定でした。
したがいまして、チューブから出したらすぐに使うようにして、別の容器などへの小分けはしないようにしましょう。


3ヶ月程度使い続けないと効果は実感できない

長期投与時の有効性について国内長期投与試験における総皮疹数の減少率の推移を調査したデータが有ります。
総皮疹数の減少率は 3 カ月程度までは比較的減少傾向が大きく、以降は最終評価時まで大きく変動することなく推移しました。





50%くらいニキビが減らないと見た目の効果は実感できません。
つまり塗り始め1,2週間で効果を判定するのは時期尚早で、3ヶ月程度は使ってみないと効果は分からないでしょう。

逆に、治療開始 3 カ月以内に症状の改善が認められない場合にはそれ以上塗り続けても意味ないので使用を中止しましょう。

エピデュオゲルはこういう時に使う

日本、アメリカそしてヨーロッパの尋常性ざ瘡治療ガイドラインでは、ニキビの治療は重症度と皮疹の種類(炎症性皮疹、非炎症性皮疹又は両方)に基づき選択するとされています。

非炎症性皮疹(面皰)のみの軽度のニキビの場合、ディフェリンゲルのような局所レチノイドの単剤による治療が推奨されます。
炎症性皮疹を伴う軽度から中等度のニキビでは、ディフェリンゲルをベースとし、炎症性皮疹の重症度等に応じて、抗菌薬(外用又は経口)が追加されます。
また、ヨーロッパのガイドラインでは殺菌作用を有し耐性菌発生の懸念がないベピオゲルを、ディフェリンゲルや抗菌薬と併用することが推奨されています。

日本ではベピオゲルは 2014年12月に承認されたことから2008年公表の日本皮膚科学会の尋常性治療ガイドラインに記載はありませんが、ベピオゲルとエピデュオゲルの臨床的位置付けは、アメリカやヨーロッパと同様と考えられます。

日皮会誌 118: 1893-1923, 2008
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913643_1.pdf
Management of acne: a report from a Global Alliance to Improve Outcomes in Acne.J Am Acad Dermatol 49: S1-37, 2003
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12833004
European evidence-based (S3) guidelines for the treatment of acne.J Eur Acad Dermatol Venereol 26: 1-29, 2012
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22356611


ベピオゲル単剤では効果がイマイチだったひとにオススメ

海外治験の併合データにおける、ベースラインの炎症性皮疹数による重症度別の「投与開始 12 週目の総皮疹数のベースラインからの減少率」は表 のとおりです。

承認申請資料より

エピデュオゲルは各単剤と比較して重症のニキビにおいてより有用であると考えられています。
さらに、ドイツで実施された中等度から重度のニキビ患者 5,131 例を対象とした観察研究結果があります。
それは、ベピオゲルでは十分に改善されなかった患者においてエピデュオゲルにより改善する傾向が示されたという報告でした。
Safety and efficacy of adapalene 0.1% / benzoyl peroxide 2.5% in the long-term treatment of predominantly moderate acne with or without concomitant medication - results from the non-interventional cohort study ELANG.J Eur Acad Dermatol Venereol S4: 15-22, 2015
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26059730

以上からベピオゲル単剤では効果がイマイチだったひとにオススメできる製剤です。


また、ニキビ治療において複数の外用剤を別々に塗布するよりも配合剤にすることでアドヒアランスが高まり治療効果も高くなるという報告があります。
Simplifying regimens promotes greater adherence and outcomes with topical acne medications: a randomized controlled trial.Cutis 86: 103-108,2010
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20919606

エピデュオゲルは、異なる薬理作用を有するディフェリンゲルとベピオゲルを組み合わせることで有効性を高めるだけでなく、配合剤にすることでコンプライアンスやアドヒアランスが改善し、効果が高くなる可能性が考えられます。


副作用について

国内の治験では、エピデュオゲルを使うと単剤と比較して「皮膚刺激」の発現割合が高い傾向が認められました。
しかし、そのほとんどが軽度又は中等度で、薬を中止するなどの適切な対応をとることで回復します。



エピデュオゲル
[効能又は効果]
尋常性ざ瘡

[用法及び用量]
1 日 1 回、洗顔後、患部に適量を塗布する