2016年5月14日土曜日

腎機能評価は血清クレアチニンから推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ(糖尿病学会)



2016年5月12日日本糖尿病学会は「ビグアナイド薬の適正使用に関する Recommendation」をおよそ2年ぶりに改訂しました。

「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」から(日本糖尿病学会)
http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=20


改訂箇所は2つ。

名称の変更と腎機能評価法の変更です。


名称の変更


「ビグアナイド薬の適正使用に関する Recommendation」から「メトホルミンの適正使用に関する Recommendation」に変わっています。

今回の変更理由は、国内で使用されているビグアナイド薬のほとんどがメトホルミンであることや、内外の安全性に関するエビデンスについても、メトホルミンに関するものがほとんどだからです。

多くの留意点がメトホルミンの配合薬や他のビグアナイド薬についても該当することには変わりありません。


腎機能評価法の変更


改訂前

改定後

メトグルコを除くビグアナイド薬は、腎機能障害患者には禁忌である。

メトグルコは、中等度以上の腎機能障害患者では禁忌である。SCr値(酵素法)が男1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の患者には投与を推奨しない。
高齢者ではSCr値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあるので、eGFR等も考慮して腎機能の評価を行う。
ショック、急性心筋梗塞、脱水、重症感染症の場合やヨード造影剤の併用では急性増悪することがある。
尚、SCrがこの値より低い場合でも添付文書の他の禁忌に該当する症例などで、乳酸アシドーシスが報告されている。

腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価し、eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。
eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。
脱水、ショック、急性心筋梗塞、重症感染症の場合などやヨード造影剤の併用などではeGFRが急激に低下することがあるので注意を要する。
eGFRが30~60の患者では、ヨード造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して48時間後にeGFRを再評価して再開する。
尚、eGFRが45以上また60以上の場合でも、腎血流量を低下させる薬剤(レニン・アンジオテンシン系の阻害薬、利尿薬、NSAIDsなど)の使用などにより腎機能が急激に悪化する場合があるので注意を要する。


この改訂は2016年4月8日にFDAからDrug Safety Communicationが出されたことを受けたものです。

従来の血清クレアチニンによる腎機能評価から推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ変更されました。

血清クレアチニンによる腎機能評価は、年齢・性別による筋肉量の多寡を考慮せずに一律で基準値を設定したもので不正確な評価となってしまう問題がありました。
それを解決した腎機能評価法が推定糸球体濾過量eGFRです。


eGFRは下の式に血清クレアチニン値(SCr)の数値と、あなたの年齢を代入すれば、腎臓が何%機能しているかが算出できる仕組みです。



あなたのeGFR値は下記のサイトで調べることができます。 
・ 日本慢性腎臓病対策協議会 http://j-ckdi.jp 
・ 腎臓ネット http://www.jinzou.net/