2015年10月12日月曜日

抗うつ薬ベンラファキシン塩酸塩 イフェクサーSRカプセル

イフェクサーSRカプセルはベンラファキシン塩酸塩を有効成分とする抗うつ薬です。


ベンラファキシン塩酸塩はワイス(現ファイザー)が創製したセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。


イフェクサーSRカプセルは、徐放性のカプセル剤です。


海外では1997年6月にスイスで大うつ病性障害の効能・効果で承認されて以降、2015 年 4 月現在、世界91の国又は地域で承認されています。


実は、この薬は2000年代初頭に日本で「うつ病・うつ状態」に対する承認申請が行われたのですが、その時の国内臨床試験成績からは有効性が説明できなかったこと等から、申請を取り下げたという過去があります。


その後、追加臨床試験が実施された結果、「うつ病・うつ状態」に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請を行い承認されました。


日本で、うつ病・うつ状態を効能・効果とするSNRIとしては、デュロキセチン塩酸塩(サインバルタ)とミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)が承認されています。



イフェクサーSRカプセルはうつ病治療の第一選択薬


イフェクサーSRカプセルは SNRI に分類される薬剤です。

海外の治療ガイドラインではうつ病治療における第一選択薬として、SSRIと他のSNRIとともに推奨されています。

Gelenberg AJ et al, American Psychiatric Association. Practice Guideline for the Treatment of Patients With Major Depressive Disorder,3rd edition, American Psychiatric Association, 2010

Suehs B et al, Texas Medication Algorithm Project Procedures Manual Major Depressive Disorder, Texas Department of State Health Services, 2008

Anderson IM et al, J Psychopharmacol, 22: 343-396, 2008

Bauer M et al, World J Biol Psychiatry, 8: 67-104, 2007

Lam RW et al, J Affect Disord, 117 Suppl 1: S26-S43, 2009


国内の治療ガイドラインにおいてもSNRIは、SSRI、ミルタザピン、三環系抗うつ薬等とともに第一選択薬として推奨されています。

日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン作成委員会,日本うつ病学会治療ガイドライン II. 大うつ病性障害, 2013


日本でもイフェクサーSRカプセルは海外と同様に第一選択薬として位置付けられると考えられます。


現状のうつ病治療では、最初の抗うつ薬で寛解が得られるのは全体の約 1/3 程度であるとされています。

Rush AJ et al,Acute and longer-term outcomes in depressed outpatients requiring one or several treatment steps: a STAR*D report. Am J Psychiatry, 163: 1905-1917, 2006


また、SSRI に対し十分な反応を示さなかった患者において、他のSSRIに変更するよりもイフェクサーSRカプセルに変更した場合の方が、寛解率が高かったとする報告があります。

Papakostas GI et al,Treatment of SSRI-resistant depression: a meta-analysis comparing within- versus across-class switches. Biol Psychiatry, 63: 699-704, 2008


一部の海外ガイドラインでは、他の第一選択薬に反応しない又は忍容性がないために治療変更を要する場合の第二選択薬としてもイフェクサーSRカプセルが推奨されています。

Crismon ML et al,The Texas Medication Algorithm Project: report of the Texas Consensus Conference Panel on Medication Treatment of Major Depressive Disorder. J Clin Psychiatry, 60: 142-156, 1999

SchuelerYB et al,A systematic review of duloxetine and venlafaxine in major depression, including unpublished data. Acta Psychiatr Scand, 123: 247-265, 2011


イフェクサーSRカプセルは漸増が必要な薬です。


開始用量は37.5 mg/日です。

これは、国内臨床試験において、開始用量が 75 mg/日の集団では高度の有害事象及び投与中止に至った事象の発現割合が高くなる可能性が示唆されたためです。


イフェクサーSRカプセル及び主要代謝物の消失半減期(7.6~9.7 時間及び 11.1~12.3 時間)を踏まえ、4日間の反復投与で定常状態に達するとかんがえられます。
そのため、用量に依存した有害事象は1週間以内に発現すると考えられます。

以上より増量間隔を1週間と設定されました。



イフェクサーSRカプセル37.5mg、75mg

[効能・効果]
うつ病・うつ状態


[用法・用量]
通常、成人にはベンラファキシンとして 1 日 37.5 mg を初期用量とし、1週後より 1 日 75 mg を 1 日 1 回食後に経口投与する。なお、年齢、症状に応じ 1 日 225 mg を超えない範囲で適宜増減するが、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日用量として 75 mg ずつ行うこと。