低ホスファターゼ症治療薬 ストレンジック皮下注(アスホターゼ アルファ)




低ホスファターゼ症は、組織非特異型アルカリホスファターゼ (TNSALP) の遺伝子がうまく機能しなくなる遺伝子の病気です。


TNSALPという酵素が生まれつき体中で作られなかったり、少なかったりするために全身の骨・軟骨に異常が出る難病です。


TNSALPは無機ピロリン酸及びピリドキサール-5'リン酸塩を元に骨の材料を作ったり、細胞の栄養を作ったりしているのですが、低ホスファターゼ症では、TNSALPがはたらかないので無機ピロリン酸及びピリドキサール-5'リン酸塩などのTNSALP基質の濃度が体の中で増えてしまいます。


すると、骨石灰化障害、リン酸やカルシウムの調節障害が引き起こされるのです。



主な症状として、骨の変形や破壊、疼痛、顕著な筋力低下、呼吸不全、けいれん発作、腎機能障害、歯の異常等の複数の臓器の進行性障害があります。


低ホスファターゼ症の一般的な病型は、発症時期によって周産期型、乳児型、小児型及び成人型等に分類されます。


未成年患者の主な死亡原因は呼吸不全です。


最も重症な未成年患者における死亡率は50〜100%とされています。


海外における低ホスファターゼ症は10万人出生あたり1人と推定され、日本における低ホスファターゼ症の患者数は、100〜200人と推定されています。



日本には低ホスファターゼ症を効能・効果として承認された薬剤は今まで存在しておらず、治療法は対症療法のみでした。


乳児期における不十分な胸郭形成に伴う自発呼吸不能に対しては、気管挿管による人工呼吸療法が行われます。

骨の石灰化が障害されることに伴う高カルシウム血症に対しては、カルシウム制限食事療法又はカルシウム排池のための利尿剤の投与が行われます。

中枢神経系のビタミンB6不足に伴うけいれん発作に対してビタミンB6製剤の投与が行われます。

膜性骨の石灰化による頭蓋骨縫合早期癒合症に対しては、外科的手術等が行われます。



ストレンジック皮下注は、ヒトTNSALPの触媒領域、ヒト免疫グロブリン G1のFc領域及び10個のアスパラギン酸の融合タンパク質製剤であり、欠損しているTNSALP を補充します。


そうすることで、骨石灰化を阻害する無機ピロリン酸が分解され、その結果として生成した無機リン酸がカルシウムと結合し、ヒドロキシアパタイト結晶の生成と骨の石灰化が促進され、正常な骨格形成が促されます。


ストレンジック皮下注は低ホスファターゼ症を効能・効果とする希少疾病用医薬品に指定 (指定番号(26薬) 第345号) されています。


Whyte MP, Genetics of Bone Biology and Skeletal Disease. ed. by Thakker RV, et al., Elsevier, San Diego, 2013; 337-60
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0123878292/

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厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 低フォスファターゼ症の個別最適治療に向けた基礎的・臨床的検討に関する研究 平成21年~23年度 絲合研究報告書

http://www.bone.med.osaka-u.ac.jp/


低ホスフアターゼ症とアルカリフォスファターゼ



低ホスフアターゼ症は、TNSALPをコードする遺伝子の不活化変異により生じる遺伝性疾患です。


ヒトのアルカリフォスファターゼ(ALP)には、小腸型、胎盤型、生殖細胞型及び組織非特異型の4種のアイソフォームが存在しています。


いずれのALPも無機ピロリン酸、ピリドキサール-5'リン酸塩及びホスホエタノールアミン等のリン酸モノエステルの分解を手助けしています。


無機ピロリン酸には骨石灰化阻害作用があります。無機ピロリン酸の分解により生成された無機リン酸は、カルシウムとともにヒドロキシアパタイト結晶を形成し、骨石灰化の調節に重要な役割を担っています。


また、ピリドキサール-5'リン酸塩は、ALPによりピリドキサールに変換されて組織/細胞内へ取り込まれ、活性型ビタミンB6として生体内の種々の酵素反応の補酵素として機能します。



TNSALPは体内に広く分布しています。


とくに肝臓、腎臓及び骨において高度に発現が認められています。


Buchet R, et al., Multisystemic functions of alkaline phosphatases. Methods in Molecular Biology, 2013; 1053: 27-51
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骨型TNSALPは、骨芽細胞膜及び軟骨細胞膜及び基質小胞膜に発現し、主に骨石灰化における無機ピロリン酸分解機能を担っています。



肝型TNSALPは肝の毛細胆管及び内皮細胞に発現し、エンドトキシンの脱リン酸化機能を有することが報告されていますが、肝型TNSALP欠損に起因する肝臓病変は報告されていません。


TNSALPは、通常グリコシルホスファチジルイノシトールを介して細胞膜にアンカーされています。


しかし、骨型及び肝型TNSALP は、一部血中へ放出され全身循環しており、血中ALP活性の約95%を占めることが報告されています。

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腎型TNSALPは、近位尿細管に発現が認められ、その機能は十分に明らかにされていません。


しかし一部の低ホスファターゼ症患者で腎石灰化が認められることから、局所的な 無機ピロリン酸代謝に関連した石灰化に寄与している可能性が考えられています。


Belachew D, et al., Infantile hypophosphatasia secondary to a novel compound heterozygous mutation presenting with pyridoxine-responsive seizures. JIMD Rep, 2013; 11:17-24
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Baumgartner Sigl S, et al., Pyridoxine-responsive seizures as the first symptom of infantile hypophosphatasia caused by two novel missense mutations (c.677T>C, p.M226T; c.1112C>T, p.T371I) of the tissue-nonspecific alkaline phosphatase gene. Bone, 2007, 40: 1655-61

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17395561

低ホスファターゼ症では、無機ピロリン酸の上昇によりヒドロキシアパタイトの生成が抑制され、骨石灰化が阻害されることによって、くる病又は骨軟化症が発現し、高カルシウム血症及び高リン酸血症が発現することもあります。


また、ピリドキサール-5'リン酸塩の調節不全により、組織 /細胞中ビタミンBa欠乏を生じ、中枢神経系において神経伝達物質の生合成阻害 (y-アミノ酷酸合成 におけるグルタミン酸デカルボキシラーゼ活性低下等) に伴うビタミンB6依存性けいれん発作が生じると考えられています。


ストレンジック皮下注の作用機序



ALPのはたらきを補うためにALPを静脈内投与しても、低ホスファターゼ血症は是正されるのですが骨におけるX線学的所見は改善しなかったというデータがあります。


このことから、効率的な骨石灰化にはTNSALPの骨への局在が重要であると考えられています。


ストレンジック皮下注は骨の構成成分であるハイドロキシアパタイトに結合することにより、骨への組織選択性を向上させると考えられていいます。


ストレンジック皮下注を投与することで、主に骨におけるTNSALP活性が正常化され、蓄積された無機ピロリン酸やピリドキサール-5'リン酸塩などの生体内基質が低下することにより、骨石灰化異常の改善が期待されます。


Whyte PM, et al., Infantile hypophosphatasia: enzyme replacement therapy by intravenous infusion of alkaline phosphatase-rich plasma from patients with Paget bone disease. J Pediatr, 1982; 101: 379-86
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7108657

Whyte PM, et al., Enzyme replacement therapy for infantile hypophosphatasia attempted by intravenous infusions of alkaline phosphatase-rich Paget plasma: results in three additional patients. J Pediatr. 1984; 105: 926-33

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6502342



ストレンジック皮下注12mg/0.3mL
ストレンジック皮下注18mg/0.45mL
ストレンジック皮下注28mg/0.7mL
ストレンジック皮下注40mg/1mL
ストレンジック皮下注80mg/0.8mL


[効能・効果]
低ホスファターゼ症


[用法・用量]
通常、アスホターゼ アルファ(遺伝子組換え)として、1回1mg/kgを週6回、又は1回2 mg/kgを週3回皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、適宜減量する。