フェロミアは制酸剤と併用しても服用時間をあける必要はありません

鉄剤には制酸剤を併用すると吸収が悪くなるので、併用する際には服用時間をずらすなどが必要なものがあります。



両薬剤の添付文書の使用上の注意に併用注意として記載されています。



しかし、すべての鉄剤が制酸剤と併用すると吸収が悪くなるわけではありません。



鉄剤の種類には、無機鉄と有機鉄があります。


無機鉄:硫酸鉄(フェロ・グラデュメット錠)
有機鉄:クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア錠)


制酸剤と鉄剤の併用が問題となるのは無機鉄の場合です。



制酸剤は胃内pHを高め、制酸剤に含まれる陰イオン(炭酸イオン、水酸化イオン)と鉄が高分子の重合体を形成しやすくなります。



高分子鉄重合体は吸収されにくく、また吸収可能な低分子量の鉄が少なくなってしまうことで鉄の吸収が低下してしまいます。



硫酸鉄と制酸剤との併用により鉄吸収阻害が臨床においても報告されています。

O'Neil-Cutting MA, Crosby WH, The Effect of Antacids on the Absorption of Simultaneously ingested Iron, J.Amer.Med. Assoc, 255, 1468-1470 (1986) .
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3005669

Hall GJ, Davis AE, Inhibition of iron absorption by magnesium trisilicate, Med. J. Aust. , 2, 95-96 (1969) .http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/5803866

G. Ekenved, Influence of a liquid antacid on the absorption of different iron salts, Scand. J. Haematol.(Suppl.) , 28, 65-77 (1976) .
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1064903




クエン酸第一鉄ナトリウムは酸性から塩基性の広いpH域で低分子鉄として溶解することが報告されています。


したがいまして、クエン酸第一鉄ナトリウムは制酸剤の影響を受けにくいと考えられています。
石野芳雄,Physico-chemical properties and stability of tetrasodium biscitrato iron (II). 医薬品研究,19,44-52(1988).
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902030883595066



フェロミアは制酸剤の影響を受けにくい。

無機鉄は酸性の水溶液中では6個の水分子がくっついて溶解しています。


Fe(H2O)6 2+の状態で存在



塩基性になるとpHの上昇により水分子のH+が解離します。



そして、鉄が水酸化イオンと手を取り合い-Fe-OH-Fe-OH-Fe-のように無限の鎖をなすことで、高分子鉄重合体が形成されます。



硫酸鉄のような錯体構造を持たない鉄は水溶液中でpHが上昇するとH+が外れ容易に高分子鉄重合体を形成してしまいます。



一方、クエン酸第一鉄ナトリウムはクエン酸との錯体構造を形成しています。



水分子の影響を受けないので水溶液中のpHが上昇した状態でも、クエン酸と鉄分子が安定して低分子キレートを形成できます。



クエン酸第一鉄ナトリウムは制酸剤との併用による吸収阻害を受けにくい経口鉄剤であると考えられます。



以上のような事実が明らかになってはいますが、すべての鉄剤と制酸剤を包括して同様あるいは同程度の相互作用として添付文書に記載されています。



鉄剤と制酸剤をみたら脊髄反射的に疑義照会するのではなく、無機鉄と有機鉄の違いを理解して対応しましょう。