肺動脈性肺高血圧症(PAH)



肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、血管の病気です。肺と心臓をつなぐ血管の内側が狭くなったりエンドセリン受容体を介した血管が上手く拡がらない障害を生じる血管障害です。

血管の内皮細胞と平滑筋細胞との相互作用の異常により、血管収縮、血管平滑筋細胞増殖、血管内皮増殖及び血栓などを生じます。

プロスタサイクリン経路、一酸化窒素経路、活性化したエンドセリン-1経路が病態に重要な役割を果たしていると考えられています。


肺動脈性肺高血圧症と診断をうけた後の患者さんの平均生存期間は4~5年といわれています。

Kawut SM et al.New predictors of outcome in idiopathic pulmonary arterial hypertension. Am J Cardiol 95(2):199-203, 2005
http://www.ajconline.org/article/S0002-9149(04)01524-3/abstract

Humbert M et al.Survival in incident and prevalent cohorts of patients with pulmonary arterial hypertension. Eur Respir J 36(3): 549-555, 2010
http://erj.ersjournals.com/content/36/3/549.abstract

Benza RL et al.An evaluation of long-term survival from time of diagnosis in pulmonary arterial hypertension from the REVEAL Registry. Chest 142(2): 448-456, 2012
http://journal.publications.chestnet.org/data/Journals/CHEST/24699/448.pdf




肺動脈性肺高血圧症 情報提供サイト PAH.jp(グラクソ・スミスクライン)
http://pah.jp/index.html

肺動脈性肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の末梢の小動脈の内腔が狭くなって血液が通りにくくなり、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。 
心臓の中でも、肺動脈に血液を送る室を右心室といいます。 
この右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、肺動脈圧の高い状態が続くと機能が低下してしまいます(右心不全)。 
長い間の研究で、さまざまな治療薬が試みられていましたが、最近、肺血管を拡張させる薬が開発され、治療効果も上がってきています。


肺動脈性肺高血圧症 難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/171

何故このような病気が起こるのかは解明されていません。 
この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。


特定非営利活動法人 PAHの会
http://www.pha-japan.ne.jp/



肺動脈性肺高血圧症の治療


最新の肺高血圧症に関するガイドラインには、2013年に開催された第5回肺高血圧症世界シンポジウム(ニース)での議事録を集約した米国心臓病学会誌のガイドラインや欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)及び欧州呼吸器病学会(European Respiratory Society: ERS)が作成した肺高血圧症診断・治療アルゴリズムがあります。

Galie N et al.Updated Treatment Algorithm of Pulmonary Arterial Hypertension. J Am Coll Cardiol 62(25 Suppl D): D60?72, 2013
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109713058749


日本では、日本循環器学会が日本呼吸器学会や日本リウマチ学会、日本胸部外科学会など関連学会の協力を得て 1999年から 2000 年にかけて初版ガイドラインを発出し、その後2006年及び2012年に部分改訂を行っています。

基本的には最新の欧米ガイドラインに準拠して作成されているようです。

肺高血圧症治療ガイドライン 2012 年改訂版(2011 年度合同研究班報告)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nakanishi_h.pdf


肺動脈性肺高血圧症の治療ではエンドセリン経路、一酸化窒素経路及びプロスタサイクリン経路の 3 系統の治療薬を中心に使用しています。

単剤で治療を開始し、効果が不十分な場合は残る2つの異なる系統の薬剤を追加する併用療法が推奨されています。


近年では肺動脈性肺高血圧症の治療環境は急速に改善しています。


しかし完治させる方法は依然として肺移植以外にはありません。

肺移植や PGI2製剤の静脈内持続投与に至る前に経口治療薬で病態をコントロールし、肺動脈性肺高血圧症の疾患重症度を示す WHO機能分類がクラスⅢ又はⅣの患者をクラスⅠ又はⅡの状態に改善させること、もしくはクラスⅠ又はⅡの患者がその状態を維持することが治療の目標とされています。

McLaughlin VV et al.Treatment goals of pulmonary hypertension. J Am Coll Cardiol 62: D73?81, 2013
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109713058774

Barst RJ et al.Updated evidence-based treatment algorithm in pulmonary arterial hypertension.
 J Am Coll Cardiol 54(1 Suppl S): S78-84, 2009
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3686287/


経口のエンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタン(トラクリア)、アンブリセンタン(ヴォリブリス)そしてマシテンタン(オプスミット)は、最新の治療アルゴリズムにおいて WHO 機能分類クラスⅡ及びⅢの 肺動脈性肺高血圧症患者さんに対して最も高い推奨度の治療薬として位置付けられています。


関連:
肺高血圧症の治療 | YG研究会 賢く生きる