非定型抗精神病薬ルラシドン



ルラシドンは大日本住友製薬が創製した非定型抗精神病薬です。
海外での製品名は「LATUDA:ラツーダ」です。

2010年10月にアメリカで成人の統合失調症の適応で承認されています。

これまでにカナダとスイス、ヨーロッパ、オーストラリアでも承認を取得しています。
スイスでは武田薬品提携し2013年9月に発売しています。


日本では2015年統合失調症の適応で申請予定です。


ルラシドンの特徴


ルラシドンとその他抗精神病薬の受容体親和性

Ishibashi T, et al(2010)Pharmacological profile of lurasidone, a novel antipsychotic agent with potent 5-hydroxytryptamine 7 (5-HT7) and 5-HT1A receptor activity.J Pharmacol Exp Ther.;334(1):171-81.


非定型抗精神病薬のオランザピン、リスペリドン、クロザピンは
D2受容体よりも5-HT2A受容体に高い結合親和性を有することを特徴としています。


ルラシドンはドパミンD2受容体と5-HT2A受容体に高い結合親和性をもっています。

ルラシドンはドパミンD2受容体と5-HT2A受容体に対して同程度の親和性をもっています。

この点が、他の非定型抗精神病薬との違いであり特徴です。




ルラシドンは、5-HT7受容体、5-HT1A受容体、α2C受容体にも高い結合親和性をもっています。
これらの受容体に対する作用が薬の効果に関与していると考えられています。


また、ルラシドンは、D1受容体および 5-HT2C受容体に対して、結合親和性は高くありません。


さらに以下の受容体などには結合しないといわれています。

  • 5-HT3、5-HT4 受容体、
  • アドレナリン β1、β2 受容体、
  • アデノシン A1、A2受容体、
  • コレシストキニン CCKA、CCKB受容体、
  • GABA-A受容体、
  • AMPA受容体、
  • カイニン酸受容体、
  • NMDA 受容体、
  • グルタミン酸受容体、
  • ベンゾジアゼピン受容体、
  • ニコチン受容体、
  • オピオイド受容体、
  • シグマ受容体、
  • L 型 Ca チャネル、
  • N 型 Ca チャネル、
  • 5-HT 取り込み部位、ドパミン取り込み部位



ルラシドンはD2L受容体および 5-HT7受容体に対して、
競合的なアンタゴニストとして働きます。

また、5-HT1A受容体の部分アゴニストでもあります。

5-HT1A受容体アゴニスト、5-HT7受容体アンタゴニストは
不安やうつ症状に関与していることが報告されています。

つまり、ルラシドンも同様に、うつ・不安の改善といった作用があると考えられています。


Millan MJ (2000) Improving the treatment of schizophrenia: focus on serotonin (5-HT)1A receptors. J Pharmacol Exp Ther 295: 853-861.
http://jpet.aspetjournals.org/content/295/3/853.long

Shimizu H, et al (1987). Pharmacological properties of SM-3997: A new anxioselective anxiolytics candidate. Jpn J Pharmacol 45:493-500.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jphs1951/45/4/45_4_493/_pdf

Wesolowska A, et al (2006) Effect of the selective 5-HT7 receptor antagonist SB 269970 in animal models of anxiety and depression.Neuropharmacology 51: 578-586.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0028390806001237

Sallinen J, et al (2007) Pharmacological characterization and CNS effects of a novel highly selective alpha2C-adrenoceptors antagonist JP-1302. Br J Pharmacol 150: 391-402. 


オランザピン、リスペリドン、クロザピンは H1受容体に高い結合親和性を示します。
オランザピンおよびクロザピンはムスカリン受容体に対しても結合親和性を持っています。

しかし、ルラシドンは他の第二世代の抗精神病薬と異なり、
H1受容体、ムスカリン受容体に対して結合親和性をもっていません。

5-HT2C受容体に対しても結合親和性は高くありません。


非定型抗精神病薬には体重増加作用という副作用が知られています。
この副作用にH1受容体、5-HT2C受容体が関与していると考えられています。


Reynolds GP, et al (2006) The 5-HT2C receptor and antipsychotic-induced weight gain ? mechanisms and genetics. J Psychopharmacol 20(4 Suppl): 15-18. 


ルラシドンがこれらの受容体に対し、結合親和性が低ことは、
体重増加の副作用が少ないと考えられます。

この点は、近年の臨床試験の結果において確認されています。

Meyer JM, et al (2009) Lurasidone: a new drug in development for schizophrenia. Expert Opin Investig Drugs 18: 1-12. 



また、ムスカリン M1受容体拮抗作用は認知障害との関連が懸念されています。
特に高齢者などで特に重篤な問題となる可能性があります。

ルラシドンのムスカリン受容体に対し親和性を有していない点は、
高齢者にも投与可能な抗精神病薬として期待されています。


ルラシドンはα1受容体に対する結合親和性は高くありません。、
そのため、α1受容体を介した起立性低血圧などの副作用(ふらつき)は
ほとんどないと考えられています。



抗精神病薬による錐体外路症状(extrapyramidal symptoms, EPS)は、
黒質線条体ドパミン神経を介して惹起されると考えられています。

ハロペリドールのような定型抗精神病薬でリスクが高いといわれています。

ルラシドンはクロザピンと同様に、非定型抗精神病薬であり
定型抗精神病薬と比べて EPS 発現リスクは少ないと考えられています。

また、
5-HT1A受容体アゴニストが、D2受容体アンタゴニストによるカタレプシー惹起作用を
軽減したとの報告があることから、

5-HT1A 受容体に部分アゴニストとして働くルラシドンには EPS の軽減作用も
併せ持つのではと期待されるています。



ルラシドンの安全性について

ルラシドンは、他の非定型抗精神病薬の場合と同様の副作用リスクを有しています。

臨床試験で多くみられた副作用は
アカシジア、傾眠、鎮静、吐き気、不眠、嘔吐でした。

アカシジア、傾眠やめまいの発生率は用量依存的に増加しました。

また、ジストニア、振戦、パーキンソンおよび唾液分泌過多などの
錐体外路症状(EPS)も用量依存的に増加する傾向にありました。
これらの有害事象は、ルラシドン120mg/日投与群で最も高い頻度で発生しています。

EPSの発生率は、ハロペリドール10mgよりも少ないという報告もあります。

吐き気や嘔吐はルラシドンで特徴的な副作用です。

血中脂質、グルコースおよびHbA1cに対する影響はほぼ無いか、限定的だといわれています。


Latuda Assessment report(EMA)


Latuda Medication Guide(FDA)