2014年11月19日水曜日

ビームゲンとヘプタバックスⅡの違い

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※2016年10月からB型肝炎の予防接種は定期接種になりました。
B型肝炎ワクチンの定期接種化について - 厚生労働省
定期接種実施要領(平成28年6月22日改訂)

B型肝炎ワクチンは1982年以降、世界で10億回以上接種されている、とても安全なワクチンです。

日本でB型肝炎ワクチンとして発売されているものには2種類あることをご存知でしょうか。

ビームゲンヘプタバックスⅡです。

両者の違いは何なのでしょうか。


B型肝炎ウイルス


B型肝炎にはAからJまでの9つの遺伝子型(ジェノタイプ)があります。
日本は今までジェノタイプCの感染者が多くみられていました。
しかし近年欧米に多いジェノタイプAの感染者が日本でも増加していると報告されています。

Kobayashi M et al,(2008)Change of hepatitis B virus genotypes in acute and chronic infections in Japan. J Med Virol.;80:1880-1884
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.21309/pdf


ワクチンの原料となるウイルスの型が違う


ヘプタバックスはジェノタイプA(adw)、
ビームゲンはジェノタイプC(adr)のみを抗原に含みます。


このように書くと、

「ヘプタバックスはジェノタイプAしか予防できないのか」

「2種類接種しなければ予防できないのではないか」

と、思われるかもしれませんが大丈夫です。

どちらのワクチンも抗原性に普遍性があり、1種類の抗原で他の種類もカバーすることが出来るのです。


接種の途中でワクチンの種類を変えてもいいのか?


「1回目、2回目はヘプタバックスだったのに3回目はビームゲンで接種したのだけれど問題ないのでしょうか?」よく耳にする質問です。

世界には数多くのB型肝炎ワクチンがあります。
接種の途中でワクチンの種類が変わっても、免疫反応には全く問題がないと言われています。

Hepatitis B Vaccination. Who should be vaccinated against Hepatitis B?(CDC)
http://www.cdc.gov/hepatitis/HBV/HBVfaq.htm#vaccFAQ

ワクチン類はいずれも国立感染症研究所にて国家検定を受ける医薬品であり、ウイルス培養の特別な試験を除けば、一般的な試験項目は同じであり、一定水準の有効性・安全性を有していると判断されます。
一般社団法人日本ワクチン産業協会:ワクチンの基礎:29,2013.
http://wakutin.or.jp/medical/index.html


予防接種に関するQ&A集2013年(一般社団法人日本ワクチン産業協会)にも、
「B型肝炎ワクチンは複数回の接種が必要となっており、各製品の製造元では他社製品との互換性に関する臨床試験は行われていませんが、用法・用量が同一であり、同一の基準による国家検定に合格した製品であることから互換性があると考えられています。」
と記載されています。

したがって、ビームゲンとヘプタバックスを接種しても、想定される支障は現時点ではありません。

第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(平成28年9月16日)において「1歳未満児を対象とした「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」の互換性に関する臨床研究」報告書が示されました。

その報告書によると『「ビームゲン」と「ヘプタバックス-Ⅱ」のいずれの組み合わせにおいても、3回接種後には感染制御に必要な抗体価を獲得でき、重篤な副反応も認めなかったことから、これら2種類の組み換え沈降B型肝炎ワクチンでの互換性が確認された』と結論付けられました。

【2016.9追記】

抗体獲得率


ヘプタバックスが92~100%、
ビームゲンは96~100%。


添加物の違い


ヘプタバックスは防腐剤のチメロサールを含有していません。
ビームゲンはチメロサールを含有しています。

チメロサール含有製剤の接種により、過敏症(発熱、発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒等)があらわれたとの報告がありますので、接種後は観察を十分に行い様子をみましょう。

バイアルのゴム栓の素材の違い


ヘプタバックスのバイアルのゴム栓は乾燥天然ゴム(ラテックス)を含んでいます。
ビームゲンは合成ゴムです。

ラテックス過敏症のあるヒトがヘプタバックスを接種されると、アレルギー反応があらわれる可能性があるので十分注意が必要です。

2018年5月30日付で組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)「ヘプタバックス®-Ⅱ 水性懸濁注シリンジ0.25mL」および「ヘプタバックス®-Ⅱ水性懸濁注シリンジ0.5mL」が薬価基準に収載されました。(発売は8月頃を予定)
https://www.msdconnect.jp/products/heptavax/benefit.xhtml
シリンジ製剤には天然ゴムは使用されていませんので、ラッテクス過敏症の方でにも使用可能です。

包装の違い


ヘプタバックスは1バイアル0.5mLのものしかありません。
ビームゲンは1バイアル0.5mLと0.25mLの2種類あります。

10歳未満のお子様には1回0.25mLを接種するので、ビームゲンのほうが無駄がでないですね。

※ヘプタバックスも0.25mL製剤を発売予定とのことです(2016年6月時点発売時期未定)
2018年5月30日付で組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)「ヘプタバックス®-Ⅱ 水性懸濁注シリンジ0.25mL」および「ヘプタバックス®-Ⅱ水性懸濁注シリンジ0.5mL」が薬価基準に収載されました。(発売は2018年8月27日を予定)
https://www.msdconnect.jp/products/heptavax/benefit.xhtml

ヘプタバックスにはバイアル(0.5mL)とプレフィルドシリンジ(0.25mL/0.5mL)があります。
ビームゲンにはバイアル製剤(0.25mL/0.5mL)しかありません。

医療ニーズに対応するB型肝炎ワクチン製剤



【2017年3月追記】
2017年3月21日、10歳未満への誤接種による過量投与の報告があり、ビームゲン及びヘプタバックスⅡ製造の各社が「適正使用のお願い」を発出しました。

http://www.pmda.go.jp/files/000216940.pdf

http://www.pmda.go.jp/files/000216941.pdf